NY地下鉄駅にインタラクティブなタッチスクリーンの情報キオスク約90台が設置されると聞き、さっそく金融街で試作機に触ってきました。
完璧には今一歩だけど、未来の手応えは充分。
タッチスクリーン(47インチ)は夏からグランドセントラル、ユニオンスクエア、ジャクソンハイツ、クイーンズなど各駅にて順次導入となります。パッと見は「単に今の地下鉄路線図を豪華にしたパネル」だけど、これは移動を根本から変える技術かもしれません。
デザインしたのはControl Group社という、市庁舎向かいの高層ビルの21階にミニマリスト&シックなオフィスを構える"技術デザインコンサルタント会社"です(ここが47~90台で、さらに30台はCBS Outdoor社が担当)。
NY市の地下鉄を運営するメトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ(MTA)は今膨大な赤字を抱えているので、「タッチの玩具に無駄遣いして...」と難癖つけてしまいそうですけど、Control Group社では情報キオスクを一手に管理し、そこであがる収益を独占するのと引き換えにデザイン・設営は持ち出しで請け負ってるんだそうな。
試運転は30ヶ月。無限に姿を変える情報で「ユーザーのジャーニー(user journeys)」を最適化する...という新語も飛び出しているわけですが、まだベータで、そこまではとてもとても...な印象でした。正式デビューまでにはそうなってるのかな。以下に特徴をまとめておきます。
携帯のタッチとは違う。強度第一でDST採用
情報キオスクのタッチは携帯でお馴染みの静電容量方式ではありません。ピンチでズームやっても反応ゼロ。全く別物の技術です。
券売機のタッチみたいに強く押さなきゃダメです。LCDパネルの上にタッチ感知部をオーバーレイしてるのはiPhoneと一緒なんですが、そのタッチのレイヤーの中身が3M製の分散信号技術(DST:dispersive-signal technology)なのです。
静電容量方式のタッチスクリーンのように導電性ではなく、DSTでは画面の縁のところにセンサーがあって、そこでタッチの振動でタッチ位置を計算します。
振動で計算するので、波長によって精度に大きな違いが出るのが特徴。つまりペン先で突っついたり爪で弾く方が、指の腹でこするより感度はいいんでございますよ。
実際指を伸ばして触れても、思ったような反応は返ってきませんでした。タッチ位置を計算して情報引き出すまでに時間がかかるので若干遅れが出るのです。電車到着時刻をリアルタイムで計算する地下鉄アプリみたいなラグですね。
Control Group社によると、ローンチまでにはインタラクションはずっとスムーズになるそうですけど、携帯の操作性には及ばないでしょうね。産業用並みの強度が要るハードにそれを求めてもしょうがないですけどね。
なんせ沢山の人が触るものなので強度は重要。同社パートナーのコリン・オドネル(Colin O'Donnell)さんは「バットで殴っても割れない...というのは大袈裟だけど、多少げんこつで殴ったぐらいじゃ割れません」と話してましたよ。
中の電気系統が完全に外の世界から遮断されてるのも、このデザインのポイント。汗だくの指でベトベト触るとばい菌が心配ですけど、コンクリートの地面を掃除するのと同じように、空気圧を吹き付けて洗浄できるんです。触れたくない人はペン、硬貨で触ってもOKです。
最短ルートと所要時間を表示
地下鉄利用者はA地点からB地点に行くことしか考えていませんよね。情報キオスクではユニオンスクエアならユニオンスクエアから目的地をタップすると最速ルートと予想移動時間が出てきます。目的地に着いたらそこの情報キオスク(あれば)で近隣マップを引き出せば駅最寄りの主な見どころも見れるんですね。
「そんなの携帯のアプリで見れるじゃん!」「いっぱいあるよ」...確かに。でもネット接続環境がないと地下では使えないアプリも多いし、サービス内容更新してなかったりしますからね。駅案内は24時間100%最新の情報にアップデートしてないと意味ないし。Control Group社ではとりあえず情報キオスク設置済みの駅までの最短ルート&所要時間を表示するのに注力していくそうですよ。
表示された情報はどう頭に入れるのか? という部分ですけど、Control Groupのテスト運用では意外にも地図を表示すると大体の人が携帯のカメラでパシャッと撮っていったのだとか。現代的ですね。因みにスクリーンは携帯で撮るのにピッタンコな縦横比に作られてます。