アドビのねらい通りとなるか?
アドビが従来の「Creative Suite」から、クラウド版の「Creative Cloud」への移行を発表しました。Creative Suiteの名前がなくなるだけでなく、クラウド依存のいろんな機能も追加されています。アップデートされた機能そのものは、多くのアドビの正規ユーザーにとって強力なツールになるであろう一方、アドビのもうひとつのユーザー層、すなわち海賊版ユーザーにとっては厄介なことになっています。
アドビ製品は高価で、しかもクラックが簡単なので、海賊版ユーザーの格好のターゲットとなってきました。僕自身、昔AOLのWarez(海賊版ソフト)チャットルームでPhotoshop 4を発掘してダウンロードし、歓喜したのを覚えています。その後時代が下って、アドビとしてもアクティベーション手法を複雑化するなどして海賊版防止に努めていましたが、それでもアドビ製品をタダで使うためのハードルは低いままでした。
そして去年、Creative Cloudが登場しました。それは当初はパッケージ版の代替としてのサブスクリプション制サービスで、メインの存在ではありませんでした。でも今回、多くの機能がCreative Cloudに結びつけられました。アドビはCreative Cloudによって、ワークフローがはるかにユーザーフレンドリーで効率的になるとしています。ファイルをクラウドに保存してどこからでもアクセスできるだけでなく、Behanceネットワークで作品を公開したり、サービス内の豊富な共有機能を使ったりできます。そしておそらく今後のアドビのアップデートは、Creative Cloudにひもづいてのみ提供されると思われます。
つまり、Creative Cloudによって「買うか、海賊版使うか」の選択は今まで以上に難しくなり、最終的にはアドビ側に有利に働きそうです。これはすべてのソフトウェアメーカーの目指すものです。アドビは、海賊版を使うより買ったほうがいいよってことを示したんです。
ただ、Creative Cloudに完全移行しても防げない不正利用はあります。たとえば、パスワードが使い回されてしまったらどうでしょうか? 何らかの形では起こりえることです。でも、アドビはCreative Cloudの利用に厳格な制限を設けました。使えるのは端末2台のみで、3台目以降で使いたい場合は古い端末どちらかを無効化しなくちゃいけないんです。もちろんそれでもクラックを試みたり、抜け穴を探したり、何らかの形でシステムを出し抜こうとする人は出てくるでしょう。それに、別に新しい機能がなくたって、今使っている海賊版のPhotoshopとかIllustratorで満足している人はたくさんいます。
それでもアドビにとっては、海賊版ユーザーの一部でも正規ユーザーに転換させられれば、クラウドへの移行は成功だと言えるのでしょう。
Michael Hession(原文/miho)