2008年株価大暴落以来最大の12%減...
アップル株が炎上墜落する機体のように落ちましたね。
業績は創業以来最高なのに、それでもまだアナリストの予想を下回って、四半期決算発表の直後に1株60ドル下がった計算。アナリストの間では、アップルが創出した市場も飽和に達し、成長が減速してきたのでは...との見方が広まっています。
となると問題は、スティーブ・ジョブズ亡き後のティム・クック体制で果たしてアップルに急成長をもたらす新市場が開拓できるのか?...ということ。
決算報告の数値を見て、各金融機関は成長が減速しているとし、予想を下方修正しています。 モルガン・スタンレーは最高銘柄リストからアップル株を削除し、ジェフリーズは「買い」から「ホールド」に格下げしました。ジェフリーズのアナリストのピーター・マイセック(Peter Misek)氏はiPhoneの売れ行きも失速してると言ってます。
iPhone販売の減速は事実起こっている。投資家向けコールで経営陣はなんとか取り繕っていたが、四半期後半からCQ1にかけての需要は経営陣・我々の予想をかなり下回るものだった。
アップル株は昨年9月に終値1株700ドルの大台を突破して天井を打って以来、下落が続いており、あれから同の時価総額は2260億ドル(20兆4236億円)下がってます。「エクソンを抜いて時価総額世界一」になったのも遠い昔に思えます。
もっと心配なニュース
本当に心配なのは、株の下落のニュースではありません。株なんて年がら年中上がったり下がったりしてるものだし、そもそもあの時価総額は現実とかけ離れていたって話もあるので。
むしろ心配なのは業界のエキスパートがアップル製品にも減速の兆しを見ているということです。相変わらず売れてるんですが、安定してきている(つまり減速)。 そう考えると日経、WSJ、NYタイムズの「iPhoneの部品発注数が減ってる」という報道も合点がゆきますよね。
昨日の質疑応答でティム・クックCEOは「心配はしていない」と語り、今後発売予定の新製品も沢山あるからね、と話していましたが、知りたいのは「iPod、iPhone、iPadみたいに市場に火をつける新製品がそこにひとつでもあるのか?」「鳴かず飛ばずで終わるんじゃないのか?」ということです。これはおそらく全株主が内心思ってることではないでしょうか。
僕は2011年に「アップルはジョブズ抜きで時価総額世界一になれるのか?」という記事も書きました。
その時は「答えはおそらくNO」という結論でした。今でもエクソン・モービルの時価総額をアップルが超えたなんてちょっと考えられないことだと思います。
時代遅れのOSを搭載した高すぎるベージュの箱つくって一時は会社売って株主に金返せ、とまで言わたアップルが、ジョブズがきて変わった、iPod+iTunes、iPhone、iPadという3つの市場を創生した、という趣旨のことをあの時は書きました。
新しい市場を創ることでアップルは全く未知の領域に踏み込み、記録的数字を弾き出し、時価総額は成層圏まで上がったのですね。
市場が安定期を迎えた今、あんな記録的数字はもはや弾き出すことはできません。そして減速。株式市場もこれに気づきました。前からわかってたことではあるんですが、なんせウォール街ですからね。冷えた頭で物事見るより、憶測やワクワクする話に飛びつくところがあるので。
新市場をつくる潮時
巨人として生き長らえ、勝ち続けるには、アップルも新市場創出が急務です。未踏の領域で、新たなゴールドラッシュを呼び起こさなくては。飽和した市場で今までと同じペースで利益を出すのは不可能ですよね。新たな製品カテゴリが必要です。
そういうことはスティーブが得意でしたが、彼はもういません。
蛇の油売り、オズの魔法使い、天才ア○○○ルのジョブズ抜きで、果たしてアイディアを実行に移して傷ひとつない製品に仕上げることができるんでしょうか。
ジョニー・アイヴが天才なのは知ってます。ティム・クックも他の人も。でもジョブズほどのビジョンを備えた人はいないと思うのです。
ちょっと前に書いた記事から引用しておきます。
僕はジョブズ抜きでもアップルは生きていけると昔は思っていた。2008年にはジョブズがどんな風に永訣の時に備えているか紹介し、彼がいなくても大丈夫、会社はびくともしないと思う、と書いた。が、あれは僕の見方が甘かった。
株主はそうは思ってなかったのだ。2008年に彼のがん再発のニュースをスクープした途端、ものの数分でアップルの時価総額は数十億ドル下落した。あの時はアップルも親派のCNBC記者もニュースを否定しにかかったが、事実であることは後でジョブズ本人が認めた。
投資家は正しかった。今の僕ならジョブズ抜きでアップルはアップルでいられないと確信をもって言える。
新市場を創生できなければ前のペースで成長するのは難しいでしょう。ジョブズ抜きで新しい市場を創生できる可能性は低い。すごく低い。というぐらい彼のビジョンは重要だったのです。
新市場創出が無理となれば、アップルもしまいにはソニーのようになってしまうかもしれません。偉大な会社で製品も素晴らしくデザインも素晴らしいのだけど、携帯もタブレットもコンピュータも競争に晒されながら売る企業群のひとつ。
結局、やや期待外れだったものの記録破りな四半期業績が原因でみんなアップル株を売りに走ってるんじゃなく、そっちが本当の原因なんですよ。
Jesus Diaz(原文/satomi)